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デンマークの社会福祉とは?3日間の研修で得た学びと考察

令和6年11月8日(金)~10日(日)の3日間、栃木県足利市にて千葉忠夫先生が理事長を務める主催:NPO法人「日本・デンマーク生活研究所」のお誘いにより、一般社団法人「障がい者の方たちと里山の自然と命を守る会:作業所通称:みらいへ」様・「早稲田大学総合政策科学研究所」様の共催の下、「第13回WEEKEND FOLKEHØJSKOLE IN ASHIKAGA 研修」という勉強会が催され、株式会社ENTOWAを代表して吉岡が参加させていただきました。

今回の目的は「真の民主主義を実現すること」。

3日間、参加者の皆さんが熱く真剣にディスカッションする場面ばかりでした。その様子を写真を交えながら報告させていただきます。

1日目:他己紹介で始まる熱い交流

1 1日目は夕刻前の集合ということでホテルロビーにてそれぞれ簡単な挨拶の後、千葉忠夫先生との再会を皆さんが喜び、写真を撮ったり近況報告をしたりと、早速熱く活況な時間が始まりました。

私はつい先日千葉先生が執筆された「理想の国」を持参していたため、サインを求めると共に「意志あるところに道は拓ける」という言葉を書き添えていただきました。

諦めないで地道にコツコツとやっていきなさい。そこから全ての道は始まるよ。と聞いて取れました。
このような歓談のあと、夕食会場に移動して「他己紹介」の始まりです。

他己紹介とは?

他己紹介とは『ある他人のことを大勢の人に対して紹介すること』で、私は宮城県在住の女性経営者の方を他の皆さんに紹介することとなりました。この方は2026年度中に岩手県内の温泉郷で日本版のフォルケホイスコーレを開校するという明確なビジョンを掲げておられる方で、その情熱や大変すごいものを感じました。

他の参加者の皆さんも目的が明確なだけに徐々に熱気を帯びてくるのは必然なことで、参加者約30名の他己紹介終了までに90分ほどかかったのは圧巻でした。

その後もデンマークから参加された3名の方(内1名は日本人)の話しに聞き入って、あっという間に終了の時間となりました。

2日目:講演とシンポジウムで学ぶ「フォルケホイスコーレの存在意義」

2日目は就労継続支援B型事業所「みらいへ」にて千葉先生の講演会や共催されている法人の方々によるシンポジウムが開催されました。

講演テーマは「民主主義を創造するフォルケホイスコーレ」でシンポジウムのテーマは「フォルケホイスコーレの存在意義」です。

千葉先生の講演会は決まって一方通行ではなく、参加者の皆さんに質問を投げかけたり、参加者自ら手を挙げて意見を伝えるスタイルなのでとても盛り上がります。

自分の意見を心に秘めておくことも大切かもしれませんが、言葉にしてみるだけでとても共感を得たり、補足してもらうことで考え方にボリュームを与えてくださるので、私も必ず自分の意見を伝えるようにしています。

フォルケホイスコーレはデンマークの礎

シンポジウムでは千葉先生・共催の早稲田大学研究所の方・「みらいへ」の代表者と職員・デンマークの方がそれぞれフォルケホイスコーレの存在意義を話されて、改めて現在のデンマークの礎となったことを再確認することができました。

千葉先生はフォルケホイスコーレを実際に運営されているため現状の詳細を話されましたし、デンマークの方も同じく父親の代から運営されているということで、その必要性やデンマークにとって欠かせない重要な学校であることの説明がありました。

早稲田大学から参加された教授のうち、お一人の方はスウェーデンに在住していたとのことで、北欧諸国の比較文化論としてデンマークを考察することができました。

最後に「みらいへ」の取組みとして障がい者が作った作品を適正な価格で販売するフェアトレードを推進していて、特に農福連携という農業を介しての作品作りに力を注いでおられました。

まだまだトライ&エラー&エラー中だと仰っていましたが、この繰り返しがやがて意志あるところに道は拓けるのだなと実感しました。

最後に一般の参加者も多数シンポジウムに参加されて、穏やかな風が吹き注ぐ会場での講演及びシンポジウムは終了しました。
その夜には参加された皆さんと会食しながらグループに分かれて、2日間の学びをそれぞれ発表し合いました。

いつも思うことなのですが、デンマークについて関心の高い皆さんが集うと、必ず頷きが増えて共感から新しい考え方やヒントが頭に閃きます。それがすぐに実行できることではなくても、必ずやいつか役に立つこととして自分の知識の引き出しに入れることができます。

フォルケホイスコーレとは?

北欧独自の教育機関のこと。全寮制となっており全員が共に生活することで、民主主義的思考を育てたり、知の欲求を満たす場として存在する。

3日目:グループディスカッションの成果発表と修了式

最終日は昨日のグループディスカッションの発表会と修了証の授与式です。まず発表会は6班が手上げ方式で発表します。1班から順番にするとか、先生が誰かを当てるというような形式ではなく、デンマークならではの自ら手上げ方式なのです。私の班は若い女性の方が2名で発表をしてくれました。

「生きやすい社会とは」というテーマで話をされましたが、実体験を基にして真剣に生きようとしている人を阻害する話をされました。発表者自ら障がいを有する方だったとは私も知らず、自らの体験を赤裸々に話しされました。やはり、困っている人に優しい国、国民が優しい人にならなければ真の民主主義国家にはなれないなと実感しました。

1個人の話しでしたが、社会全体の縮図のように感じることができて、最後はとても考えさせられる時間となりました。

デンマークで実現されている「幸せな国」とは?

  • 幸福な国の条件とは
    経済大国であることだけが幸せではない。国民の声が政治に反映され、障がい者を含むすべての人々が安心して暮らせる社会が理想の国だと考えさせられる。

考察:日本でデンマーク フォルケホイスコーレを実現するために

3日間あっという間の講義やシンポジウム、そして何よりも参加者の皆さんとの語らいでした。

毎回、デンマークの国家観や社会福祉制度上の取組みは全てが学びなのですが、特に今回の学びは「日本でフォルケホイスコーレはなぜできないのか」又「どうやったら日本で運営できるのか」でした。

成功事例を作る重要性

結論から言いますと、全国で数ヶ所営んでいるところはあるものの、行政のバックアップ等は皆無に等しく、民営でどうにか成り立っているというところがほとんどとのことでした。今の日本の教育制度や福祉の制度上にいきなりフォルケホイスコーレを乗せようとしても関連性が薄く浮いてしまう。であるならば、どこかの行政区の区長等に理解を求め、助成を受けながら成功事例を創ること。成功事例ができれば模倣しようといううねりが起きて全国に広がる可能性が高まるのではないかという推論で終わりました。

投票率が示す日本の課題

自社の理念にも謳ってある「ノーマライゼーション」:(この場においては「ノーマリゼーション」と表現していました)の精神を醸成するために、デンマークも決して平たんな道を歩いてきたわけではありません。このままではいけないという国民の小さな力が結集して政治を動かしてきたのです。折しも日本ではこの講習の前に衆議院選挙が行われました。

今回は少し投票率が上がるのではないかと個人的に期待しましたが、約54%ほどで終始して戦後3番目に低い投票率だったそうです。

「幸せな国」ってどんな国だろうといつも考えさせられます。お金がたくさんあって好きなものを買える経済大国なのか。はたまた、決して大国ではないけれど政治が国民の声を必ず反映して、国民が望むことを形にしてくれる国家なのか。

これは個人の価値感だと思いますが、自分が生まれた国を誇りに感じ、意見を声にして表現できる国であってほしいし、障がいを有する人にも国の手厚いバックアップや人としての優しさが自然と溢れる国がいいなと個人的に思います。自社の理念の最後の文言でもある「温もりのある事業所」、つまり「人として温もりのある国」が、つまりは理想の国だと再確認しました。

小さな灯を照らし続けることの誓い

「ノーマライゼーション」の提唱者であるバンク・ミケルセン氏の意思を継承して日本の津々浦々を駆け回っている千葉先生はじめ、今回お世話になりました法人の皆様にこのような機会をいただいたこと。また、手厚いおもてなしをいただいたことに感謝申し上げます。

受けた恩を胸に刻み、日本の西の果て長崎より小さな灯を照らし続けることをお約束します。

株式会社ENTOWA 吉岡正恒

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